プロフィール
合唱団紹介
熊本ポリフォニックアンサンブル(KPE)
中世のヨーロッパ・ルネサンス期の合唱曲は、現代の私たちがなじんでいる合唱曲とは大きく様式が異なります。ルネサンスの作品は「ポリフォニー様式」と呼ばれる多旋律の合唱曲であるのに対し、現代作品に多い様式の「ホモフォニー様式」は主旋律を歌う声部は通常1つです。したがってポリフォニー音楽(ルネサンス期の合唱曲)は、非常に繊細であり、また和音が非常に美しく透明感にあふれた響きがする音楽です。 またこの時代の合唱曲の特徴として、無伴奏の「アカペラ=a cappella」(イタリア語で「ア」は場所を表す前置詞、「カペラ」とはチャペル、すなわち礼拝堂を表す名詞)がまずあげられます。いにしえより教会の伝統として、多くの場合無伴奏で演奏されます。次に、その発声方法についても、一切のビブラートを排除した、ノン・ビブラートの透き通る声で演奏されることも特徴としてあげられます。さらに合唱団員の構成人数は非常に少なく、各パート数名で演奏される少人数のアンサンブルであります。
このような特色をもつルネサンス期ポリフォニー合唱曲のすばらしさを研鑽し演奏することを目標に掲げて、平成11年5月1日に「熊本ポリフォニックアンサンブル」は結成されました。今年の5月で創立14周年を迎えました。音楽監督・客演指揮者として宮崎大学名誉教授の竹井成美先生に技術指導いただいております。
練習は、毎週木曜日の定期練習(於:日本福音ルーテル神水教会)と、宮崎大学名誉教授の竹井成美先生を講師に招いての講習会(月1回)とで練習を重ねています。
平成12年11月に第1回演奏会を開催し、今年10月17日には「第13回 熊本ポリフォニックアンサンブル演奏会」を開催する予定です。
昨年は10月に第12回演奏会を開催した後、12月に八代市で初めての演奏会を開催し多くの聴衆を魅了し好評を博した。また今年2月にはNHK美術館コンサートにも出演し、その演奏がNHK FMで放送されるなど、ルネサンスのアカペラ合唱曲をレパートリーとする希有な合唱団としての評価が定着しつつある。
熊本ポリフォニックアンサンブルが歌うグレゴリオ聖歌について
客演指揮者の竹井教授は、1605年日本で初めて印刷された楽譜『サカラメンタ提要』の研究者としても有名です。竹井教授は日本人の手により初めて印刷された楽譜を現代の五線譜に翻訳し、出版から400年の節目にあたる2005年、全19曲のグレゴリオ聖歌の全曲を演奏・録音し、話題を呼んでいます。
熊本ポリフォニックアンサンブルはこれまでの演奏会を通じて、熊本初演となるサカラメンタ提要のグレゴリオ聖歌を数多く演奏し、好評を得ることができました。
このサカラメンタ提要の印刷には、「グーテンベルグの印刷機」が用いられたことが知られています。この印刷機は天正遣欧使節団(1582—1590)がヨーロッパから持ち帰ったものです。キリシタン禁止令の下で、熊本県の天草にこの印刷機が運ばれ「平家物語(1592年、天草)」や「伊曽保(イソップ)物語(1593年、天草)」が印刷されました。現在グーテンベルグの印刷機(復元)は天草市河浦町の天草コレジヨ館に展示されています。また熊本市世安の熊本日日新聞社の新聞博物館にも展示されています。
熊本ポリフォニックアンサンブルが演奏してきた、サカラメンタ提要に記されるグレゴリオ聖歌は熊本と非常に縁の深い作品であり、これからも演奏し続けていきたいと考えています。
客演指揮者
竹井 成美(たけい しげみ)
宮崎大学名誉教授。大分県出身。大分が「西洋音楽発祥の地」であることにこだわり、1981年合唱団「大分中世音楽研究会」を設立し、16世紀の東西交流史を音楽の視点から研究・発表している。大分カトリック教会での定期演奏会は31回を数え、また2009年まで21年間主演した「ゆふいん音楽祭」での「ゆふいん西洋音楽探訪」をとおして、地域に根ざした団体に育てた。最近では1605年に長崎で出版された「サカラメンタ提要」に収められた19曲のグレゴリオ聖歌の全曲録音を果たし、全国で話題をよんでいる。
著書『南蛮音楽 その光と影~ザビエルが伝えた祈りの歌:音楽之 友社、1995』 『音楽を見る!~教育的視点による平均律・五線譜・ドレミの誕生の 歴史:音楽之友社、1997』。CD「目覚めのバロック(日野直子監修): UCCD3200、デッカ」、「西海に甦る『サカラメンタ提要』」。他にも多数の執筆や解説がある。
2012年には伊東マンショ没後400年を記念する演奏会を大分、熊本、宮崎で開催し、近刊の「マンショからオラショまで(その1)〜初の国際人・伊東マンショ:大阪公立大学共同出版会、2013年」の著書でその演奏がCD化されている。